最近面白かったマンガって何?と聴かれることがしばしばあるので、書きます。 瀬野反人『 ヘテロゲニア・リンギスティコ~異種族言語学入門~ 』(角川コミックス・エース) フィールド言語学者、異世界版みたいな話。 先駆者が作った辞書が間違っていたり、共通語の通訳が微妙だったり、感覚が違い過ぎて時々ちょっと怖くなったり。通じ合うなめらかなコミュニケーションでも、極端な対立でもない、言葉足らずな世界を描く。とにかく読め。 ゆうきまさみ『 でぃす×こみ 』 (全3巻) ゆうきまさみが描く漫画家もの。BL作家の話。毎回冒頭にBL短編がある。名作。 松浦ぶんこ『 悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。 』 異世界転生ものの中でも飛びぬけて面白い。 悲劇を常に先回りして、自己不信をいきる主人公。最も破滅的な未来を、どうせ自分がもたらすんだろうというペシミズムを抱えつつ、それでもなすべきことをなそうとする。高潔さ、という言葉が思い出される。優勝。 森山慎・青木潤太郎『 鍋に弾丸を受けながら 』 エクストリームな飯はうまい!とりあえず読むべき。 シマ・シンヤ『 GLITCH - グリッチ 』 むちゃくちゃよかったから、漫画好きは読んでほしい。 謎の郊外住宅地の不思議な光景を、するすると「日常」として受け入れさせられながら、それでも確かに存在する怪異や違和感を、夏休みの自由研究のノリで子どもたちが調査する話。最高。 上木敬『 破壊神マグちゃん 』 (全9巻) 言わずと知れたジャンプコミックス。『ヘテロゲニア・リンギスティコ』と一緒に読んでもいい。 ラスト数話は色々面白い。世代をまたぐあの種の時間の描き方を、人間目線でなく神話生物目線からやっていて、結果的に人間が神話化されている(ヘラクレスみたいに)。 蛇野らい『 嘆きの亡霊は引退したい ~最弱ハンターによる最強パーティ育成術~』 異世界ものでは、こちらも特別面白い。ある言葉を多重的に解釈すると、それが深みを帯びていく、という感じをうまく伝えていて、「哲学ってこんな感じだ」と思ったりもする。 挙げだすとキリないのでこのくらいで。 私の新刊もよろしくお願いします! 超買ってください(ほんとに) 『 鶴見俊輔の言葉と倫理:想像力、大衆文化、プラグマティズム...
林遣都が出ている 「初恋の悪魔」 の第一話をみた。 このドラマの林遣都に似ていると言われて、確かに眼鏡とか、着ているシャツとか色々似ていた。熱が出た状態でオーバーワークに追い込み、糖分を与えずに三徹くらいさせたら、こういう言動にもなるかもしれない(なりません) どうでもいいけど、ルブタンが「元彼の遺言状」(前シーズンのドラマ)に引き続き出てきましたね。ハイブランドの靴としてアイコニックだからかな。「贅沢のために物を買いました」というときに、出しやすいアイコンになっているのかもしれない。 サスペンスの規則を転倒させる手つき 脚本は坂元裕二。さすがという感じで、探偵ものやサスペンスの規則やお約束の転倒のさせ方が面白い。 「事件は会議室で起こってるんじゃない、現場で起こっているんだ」をひっくり返して、モデルと妄想を使って自宅で会議をし続ける。 特に林遣都がいい。自分の恋愛感情を殺意として解釈するくらいの極端な鈍感さ。ハンニバル・レクターへの憧れ。自分をシャーロックになぞらえ、モリアーティを待望する。 でも、それだけの能力もないし、現実にはフィクション内に出てくるような「芸術的犯罪」もないし、理由のない暴力などもない。 自宅捜査会議、あるいはサイコパスたちの水平思考 全員が適度に愚かなのだが、それでも議論が進むのは、みんな常識のねじが外れたまま自宅会議を行うので、ちょっと水平思考みたいな感じになっている。言い換えると、それぞれの仮説生成自体が、それを聞く他者にとってリフレーミングになっている。 ちょっと常識からずれている、という意味でキャッチーだから「サイコパス」という言葉を使いますね。(ちなみに、自分と林遣都をなぞらえていることからわかる通り、サイコパスにディスの意味はないか、自分ごとディスっていると読んでもらうといいかなと思います。) ただ、単なるサイコパスの集まりだと恐らく議論にならない。けど、登場人物たちは互いに自分なりの強烈なこだわりがあって、その観点からの検証が入る(被害者に共感し過ぎ、合理性がないなど)。他者の言葉を、自分の妙なこだわりで反証していく。そして、こだわりがみんな違う。これ、なかなかに期待できる設定の組み方だと思う。 しかも、「天才ではないサイコパス」というのは、案外出てこなかった気がする。ポイントは、誰も名探偵ではないということ。みんな...