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2022年1月8月までに読んだ600冊の漫画から特に面白かったものを挙げる

最近面白かったマンガって何?と聴かれることがしばしばあるので、書きます。


瀬野反人『ヘテロゲニア・リンギスティコ~異種族言語学入門~』(角川コミックス・エース) 

フィールド言語学者、異世界版みたいな話。

先駆者が作った辞書が間違っていたり、共通語の通訳が微妙だったり、感覚が違い過ぎて時々ちょっと怖くなったり。通じ合うなめらかなコミュニケーションでも、極端な対立でもない、言葉足らずな世界を描く。とにかく読め。


ゆうきまさみ『でぃす×こみ』 (全3巻)

ゆうきまさみが描く漫画家もの。BL作家の話。毎回冒頭にBL短編がある。名作。


松浦ぶんこ『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。』  

異世界転生ものの中でも飛びぬけて面白い。

悲劇を常に先回りして、自己不信をいきる主人公。最も破滅的な未来を、どうせ自分がもたらすんだろうというペシミズムを抱えつつ、それでもなすべきことをなそうとする。高潔さ、という言葉が思い出される。優勝。


森山慎・青木潤太郎『鍋に弾丸を受けながら』 

エクストリームな飯はうまい!とりあえず読むべき。


シマ・シンヤ『GLITCH - グリッチ

むちゃくちゃよかったから、漫画好きは読んでほしい。

謎の郊外住宅地の不思議な光景を、するすると「日常」として受け入れさせられながら、それでも確かに存在する怪異や違和感を、夏休みの自由研究のノリで子どもたちが調査する話。最高。


上木敬『破壊神マグちゃん』 (全9巻)  

言わずと知れたジャンプコミックス。『ヘテロゲニア・リンギスティコ』と一緒に読んでもいい。

ラスト数話は色々面白い。世代をまたぐあの種の時間の描き方を、人間目線でなく神話生物目線からやっていて、結果的に人間が神話化されている(ヘラクレスみたいに)。


蛇野らい『嘆きの亡霊は引退したい ~最弱ハンターによる最強パーティ育成術~』

異世界ものでは、こちらも特別面白い。ある言葉を多重的に解釈すると、それが深みを帯びていく、という感じをうまく伝えていて、「哲学ってこんな感じだ」と思ったりもする。


挙げだすとキリないのでこのくらいで。

私の新刊もよろしくお願いします! 超買ってください(ほんとに)

鶴見俊輔の言葉と倫理:想像力、大衆文化、プラグマティズム』(人文書院)

いい哲学入門にもなると思うので、鶴見俊輔って誰やねんという方もぜひ。

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